Sep 04, 2010
大阪の審美歯科を探すなら、インターネットを活用しよう
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【美の扉】
地下鉄の駅を出て、皇居を左に眺めながら、緩やかな坂を上る。東京国立近代美術館(東近美)では、東日本大震災の被災地を応援する企画展が“ひっそり”と開かれていた。
東北出身の芸術家の作品や東北の風景を描いた作品を展示した「東北に思う」。同館1階で開催中のパウル・クレー展のように、特設コーナーを作り、まとまった状態で並べているのではない。2階から4階までの常設展示室で、他の収蔵作品と一緒に、普段の位置に掲げられているだけ。鑑賞者は、作品わきの「東北に思う」と記された青いシールで気付く仕掛けだ。
「被災者のために何ができるのかと、スタッフみんなで考えた。東北出身の画家や東北の風景などに焦点を当てれば、所蔵作品ですぐに展覧会ができるのでは、と。東北の美術の重要性を伝えることは被災者への励ましにもなる」。東近美の保坂健二朗研究員(35)が語る言葉に耳を傾けながら、作品を見つめた。
鮮烈な色と荒々しいタッチで日本のフォービスム(野獣派)の先駆者となった岩手県花巻市出身の萬(よろず)鉄五郎(1885〜1927年)、20歳で亡くなった福島県白河市出身の関根正二(しょうじ)(1899〜1919年)、花巻と盛岡で少年時代を過ごした松本竣介(1912〜48年)…。東北は日本近代美術史に残る重要な画家を多く生んだ。豊かな自然は、彼らに強い創作意欲を与え、さらに日本中の芸術家たちを引きつけた。
■「道」に託した未来への希望
その風景に魅せられ、代表作「道」(昭和25年)を制作したのが、横浜に生まれ、昭和の国民的画家とも呼ばれた東山魁夷(ひがしやま・かいい)(1908〜99年)。画題となったのは青森県八戸市の景勝地、種差(たねさし)海岸だ。
東山は戦前、この地にある牧場をスケッチした。戦後、スケッチを見返したときに、アイデアが浮かんだという。牧場の柵や馬、海岸の灯台を取り去り、「道だけを描いてみたら−と思いついた時から、ひとすじの道の姿が心から離れなくなった」(自著『風景との対話』)。そして再び現地に赴き、風景をスケッチブックに写し取った。
画面中央には、草原に囲まれた道がまっすぐ延び、地平線近くで右に曲がる。人の姿のない静かな世界。絵に対峙(たいじ)していると、道のモチーフに導かれ、自身がたどってきた来し方をつい振り返ってしまう。そして同時に、将来への思いもふくらんでいく。
「未来への希望を感じてもらえればうれしい。いつか東北の人に直接見てほしい」。保坂研究員の説明に、思わずうなずいた。
残念ながら、この道は現在ではアスファルト舗装されている。ただ、今回の震災では種差海岸も津波被害を受けたが、この道に影響はなかったという。
ほかにも人物画、彫刻…と、美術史に残る作品が並んでいる。見終わったあと、東北のことを強く思った。そして気付いた。美術作品を介在して、東北に思いをはせること、つまり忘れないこと。それが被災地を応援する上で、とても大切だということを。(渋沢和彦)
◇
■六角堂と日本美術院
企画展「東北に思う」には、「天心(てんしん)と五浦(いづら)と日本美術院」と題し、震災で土台だけを残して消失した登録有形文化財の「六角堂」(茨城県北茨城市)をしのぶ展示も含まれている。
六角堂は明治38年、『茶の本』で知られる明治の思想家、岡倉天心(1863〜1913年)の住居敷地内に建てられた。六角形の平屋で、天心自ら設計。太平洋に面した五浦海岸の断崖の上にあり、思索にふけるための建物だったといわれる。
天心は同39年、自身が創立し当時の美術界に大きな影響を与えた日本美術院の日本画部をこの地に移す。彼を慕う横山大観(たいかん)(1868〜1958年)、下村観山(かんざん)(1873〜1930年)、菱田春草(ひしだ・しゅんそう)(1874〜1911年)ら俊英たちも移り住み、競い合うように制作した。
今回の展示作品39点の中には、横山ら六角堂ゆかりの芸術家の作品も加えられた。
六角堂は天心の死後、「茨城大学五浦美術文化研究所六角堂」として茨城大が管理。津波で流されたが、再建が決まり、茨城大では復興基金への協力を呼びかけている。
【ガイド】緊急企画展「東北に思う」は7月31日まで、東京都千代田区北の丸公園の東京国立近代美術館で。日本画家の東山魁夷をはじめ洋画家の萬鉄五郎、彫刻家の高村光太郎(1883〜1956年)、荻原守衛(もりえ)(1879〜1910年)、舟越保武(やすたけ)(1912〜2002年)、佐藤忠良(ちゅうりょう)(1912〜2011年)ら23人の作品39点(すべて同館所蔵)を紹介。午前10時〜午後5時(金・土曜は午後8時まで)。観覧料は一般420円、大学生130円、高校生以下および18歳未満は無料。月曜休館(7月18日は開館)。問い合わせは(電)03・5777・8600。
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