Feb 04, 2010
鉛筆の芯が接続されて汚れています
私が小学校4年生の時だったと思います。ある日、誤って手に鉛筆の芯を刺してしまいました。そのまま放置しておくと、鉛筆の芯が心に刺さった死んでしまうかもしれないと思ったのですが、痛かったので、傷が完治されるまで待つことにしました。そのまま放ってしまったところ、鉛筆の芯が打ち込まれたのは、斑点になってしまいました。今もその汚れは残っています。カマキリに触れると、がんなるとことを聞いたことがないではないだろうか。実際にされているかわからないが、恐ろしいのほくろには触れないようにしている。もしそれが事実なら、考えると怖いからとなってしまう。迷信かどうかわからないことは信じる人と信じない人に分けられるが、自分は信じている人にはあるのではないかと思う。
「業界はこのまま行けば数年で崩壊する」――電子出版時代における業界の変動を現役漫画家である赤松健氏と「サルまん」などで知られる編集家の竹熊健太郎氏がそれぞれの視点で解き明かす5日間連続掲載の対談特集の第4幕。赤松理論にある「楽しみ代」という概念とは?
●これからは年収600万円や800万円の漫画家が増えるかも(竹熊)
赤松 枠組みを考えていると危険ですよ。それだったら私は数を撃ちたいんです。複数の天才に描かせて、メディアミックスしたり色々な付加価値を加えていって、どんどんやる。いっぱい試せることが漫画の利点だったわけだから。編集者の方は、枠組みや箱にこだわる。Twitterでもお話ししましたけど、枠組み作りはいかに危険かというのを私は感じるんですよ。
竹熊 枠組みというか、編集者は作家さんと組まないと、単独ではできませんからね。
赤松 もう枠自体がなくなってきているので、編集者さえ要らなくなって、とにかくいっぱい出しまくって当たったやつを育てるシステムになってくると思うんですよね。そうなると編集者の直しもいらないんです。数があればどれかいいのがいるでしょ、みたいな形で、直しさえいらなくなるんです。
竹熊 現に過去の漫画界はある意味でそれをやってきたわけですよ。新人はいくらでもいるという前提で、下手な鉄砲も数打ちゃ当たるを。それが今は、才能ある新人はいても……。
赤松 そうです。発表する場がなくなってしまった。
竹熊 最近は出版社の人たちもみんなコミケやコミティアに行ってますね。新人発掘という意味では効率がいいから。
── コミケ以外に、今ならWeb上で作品を公開する手もあるのでは?
竹熊 うん。例えば、「マヴォ」の表紙を描いた人は今40歳で、38歳で初めて漫画家デビューしたんですよ。彼女は結婚するまで趣味で絵を描いていて、結婚して初めて自分のアニメーションや漫画をネットで発表し始めたら、それが評判になって向こうから仕事が舞い込んでくるわけです。今、ネットからデビューしてる人が相当増えてますよね。実際、若い編集者はみんなpixivを見ている。即戦力で使えるやつがいないかって。
赤松 それはアレですよね。pixivでトップ10の人に、描いてください描いてください、でもタダで、っていうんでしょ。
―― でも確かにpixiv出身の漫画家も何人か出てきましたね。
赤松 それはメジャー誌じゃないでしょ。
竹熊 そのメジャーの概念が変わると僕は思うんですよ。もう100万部売るとか、シリーズトータルで2000万部っていうのはもしかするとなくなるんじゃないかな。赤松さんとか、それこそONE PIECEとか、この辺りが最後になるんじゃないかなっていう。
赤松 それ私がさっき言ったのと同じことじゃないですか。やっぱり業界はポッキリ折れるんですよ。
竹熊 いや、だから、ただし5万部売ると。5万部は確実に売れるとなったら食えますよね。
赤松 その5万部って。単価は高いんですか?
竹熊 いや、だからそこそこ名があっても、年収600万円とか800万円で生活する漫画家が増えるということです。
赤松 えっ。
竹熊 僕が言ってるのは、そういうことなんですよ。赤松さんはメジャー作家だから、100万部売るということが1つのステータスなんでしょうし、そうしたものもあるんだろうけど、僕はむしろ確実にヒット、ヒットというかバントでいいから塁に出るみたいな。
赤松 それは編集者の視点ですよね。漫画家だったら100万人に読んでもらって、年収が数億円とかいいじゃないですか。野球選手がみんな年俸500万円と決まってたら夢がないでしょう。
竹熊 いや、それは編集者だってそう考えますよ。でも、それが難しいとなった場合にどうするかということです。きっぱり辞めるか、それでも自分はマンガが好きだから残ろうとするか。いずれにせよ、これまでとはまったく違うビジネスモデルは出るだろうなとは思ってるんですよ。それはおっしゃる通り海外市場をうまくやれれば、何億円って稼げる余地はありますよ。そのための努力を日本の漫画界ってまったくやってないでしょ。
●自分が“楽しみ代”を払っている限りはもうかることはない(赤松)
赤松 面白いのと売れるのと、どっちがいいですか。つまんないのに売れてるのはダメですか。
竹熊 うーん、面白いのがいいでしょ。
赤松 じゃあ、面白ければ売れなくてもいいんですね。
竹熊 まあその場合はね。でも、「面白い物を売りたい」とはみんな考えているんじゃないですか。
赤松 うーん、私は嫌だなあ。そこがロマンチストすぎません?
―― 最近のJ-POPの世界だと、100万枚じゃなくても、10万枚とか5万枚で自分たちが食っていく方法を考えようっていう若手がすごく多いんですよ。インディーズレーベルも自分たちで運営しようっていう。それもオリコンのトップ5に入るような人たちがそういう動きをしているんですよね。漫画もそういう形に近づいていくんじゃないかと思うんですよね。ただ、問題は、そうなったときに漫画家を目指す人が出てくるかどうかですよね。
赤松 そこなんですよ。だったら絵を描いてpixivに載せたらいいんじゃないですか。
竹熊 僕、巨額の富を得たことがないものですから、金がないならないで、それなりの楽しさを見つけるタイプなんですよね。
赤松 でも、サルまんが売れてみんなが読んでくれてた時代に、金回りがよかったり、誰もが自分を知っていたりという経験があるわけじゃないですか。
竹熊 「サルまん」の時は……売れたと言ってもたいしたことないですよ。第1巻の初版だけ会社が20万部も刷りやがってさ、僕と相原コージで止めたんだもん。最初は5万部で様子見ましょうって。そしたらさ、12万か13万部売れたんですよ。でも売れ残りが出たんで、2巻目は8万部、3巻目は4万部ですよ。3巻はさすがになくなっちゃったんで5000部増刷したんですけどね。3巻で4万5000部出たってことは、1巻目を5万部で様子見ろと言った僕の読みは正しかった。
赤松 20万部刷って12万部売れたんだったらペイできてるでしょう。
竹熊 もちろん会社はペイできてますけど、僕は根がどマイナーなんですよ。アングラのどマイナー人間ですからね。
赤松 バクマンで、売れてやる! っていう少年と、売ってやる! っていう編集者の成り上がりストーリーがありますけど、あれは認めないんですか。
竹熊 もちろんその考えは認めますよ。いや僕はね、1年間で100万部売る本と、100年掛けて100万部売る本があると思うんですよ。1年間で100万部の方がいいと思われるでしょうけど、それはもう難しいですから。
赤松 それは分からないですよ。売れた実績もあるわけだし。
竹熊 でも僕は、自分が死んだ後も自分が手掛けたものに残っていてほしい。さっき僕のことをロマンチストっておっしゃったけど、その通りです。ロマンチストで50年生きてきましたから(笑)。
赤松 私は1作目が売れなかったらすぐ辞めるつもりで、退路を確保して漫画界に来たんです。でも、後輩の漫画家たちは、退路がないんですよ。私は親を説得するのに新人賞を取ったり、デビューする時も同時に就職活動したり、すごくシビアです。自分はきっと売れるとか、売れるまでやめないとかっていうことは一切なかった。そのへんがロマンチストじゃないってことなんですけど、漫画家はすごくロマンチストな人が多いので、竹熊さんのことは漫画家みたいな感じに見えてます。
竹熊 まあメンタリティとしては、作家かもしれませんね。編集家って名乗ってるのもさ、編集者として作品が作りたいからなんです。
── 多摩美や京都精華大学の漫画家志望の学生は、どんなメンタリティなんですか。
竹熊 すごい才能だなと思う人は何人もいましたけど、僕の知る限りは一人もデビューしてないですね。それはいろいろな理由があるんですよ。他人とコミュニケーションが取れないとか、完全主義すぎて、半端なものは出したくないとか。
赤松 うまいやつはみんなそう言う。
竹熊 女性で1人、これは天才だなという子がいて、アイデアを聞いて面白いからネームにしてみてよって言ったんだけど、2年経っても完成しない。要するに完全主義なんですよ。その割にコミティアにBL(ボーイズラブ)漫画を出してて、それは描くんですよ。ところがコミティアにブースが受かったのに、会場に来たのが(午後の)3時。それまでずっと描いててさ、とじてもいないコピーの束を持ってきて。もちろん売りようがないですよね。コピーを見たらやはり上手いんですけど、これじゃあプロは無理だなと。
赤松 赤松理論には「楽しみ代」という概念があるんです。自分が描いてて楽しいと、自分が楽しみ代を払ってることになるからもうからないんです。編集者や読者を楽しませようと思って描くと、楽しみ代が自分に入ってくるんですよ。自分が楽しんでいたら、自分が楽しみ代を払うから、ほかの人は楽しみにくいし、デビュー確率も下がる。
楽しみ代がいっぱいかかるジャンルは、描いてて楽しいからみんな来て、執筆人口がとても増えるんです。すると原稿料も安くなってもうからない。だから楽しみ代が掛かるものにはなるべく手を出しちゃいけない。趣味のオリジナル同人誌はすごく楽しいんですけど、同時に楽しみ代もすごく高いはずです。逆に商業誌はいろいろな人を楽しませないといけないから、自分が楽しんでる暇は少なくなる。その分楽しみ代が入ってくる可能性は高い。
竹熊 それは金にならなかったらやってられないということですか。
赤松 そういう言い方もあります。逆に言わせてもらうと、描いてる側ばかりすごい楽しんでるものが、もうかるわけないよって感じがしますよ。因果応報じゃないですけど。
── 赤松先生の今のモチベーションは何ですか?
赤松 読者が楽しんでる顔ですね。どれだけ楽しんでくれたかというのは部数で出てますから。部数とか、印税とか。これだけ楽しんでくれたんだ、うれしいな、という。みんなが楽しんでくれれば、俺も楽しいよっていう形になって。ラブひなの後期とかはそうでしたね。
●弁護士や税理士のように、漫画家が個人で編集者を雇うようになる(竹熊)
竹熊 僕はどうしても編集者の立場で話してしまうんですが、死ぬまでには新しい漫画の状況をこの目で見てみたいというのがあるんですよ。僕の最終目標は、その状況を作ってから死にたい。Jコミは新しい状況の1つとして注目したし、僕がJコミをやるとしたら、新人や新作をそのシステムで出して、それで漫画界が活性化するということを考えちゃうんだけど、今日話を聞いてみると、赤松さんはそうでなかった。
赤松 考えてないですね。実際、リスクは徹底的に避けるほうなので。
竹熊 でも、リスクを取らないとリターンもないんじゃないですか。
赤松 私の結論は、面白いかどうか、そして売れるかどうかも分からない新人を、育てる手間は掛けていられないということです。竹熊さんはそれこそが面白いんじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、それはロマンチストな考えなんですよ。
竹熊 編集者は全員そうですよ。有望な新人に会ったときに一番の幸せを感じられるんです。
赤松 編集者はそうかもしれませんが、売れなかった漫画家さんにも人生があるじゃないですか。編集者は作家を何人かつぶしてようやく一人前、みたいな風潮もあって。でも、その売れなかった漫画家はどうするんだと。漫画家の立場から言うと、編集者が手掛けるのであれば100%の確率で売ってほしいんですよ。漫画家の人たちはみんな、売れなかったら俺たちばっかり切られて、何で俺の担当編集は何本も打ち切られてるのにいまだに社員のままなんだって思ってますよ。
―― それは竹熊さんがおっしゃった、フリー編集者が増えることで解決されるんじゃないですか。これまでは漫画家が編集者を選ぶことはできなかったわけじゃないですか。フリーの編集者が増えればそれが改善されていくかもしれない。
竹熊 フリー編集者がエージェントになるんですよ。弁護士とか税理士みたいに、漫画家が編集者を雇うんです。5年後くらいにはそうなってると思うんですけどね。
―― それは社員編集者だと実現できないですよね。あと社員編集者は異動がありますけど、フリーの人にはない。
竹熊 「のだめカンタービレ」がうまくいった理由の1つが、担当の三河さんがフリー編集者で、立ち上げから最終回まで8年間ずっと担当できたのが大きいと思うんです。あと、1980年代にジャンプからあれだけヒット作が出た背景には、編集者の異動が少なかったからじゃないかと。デビュー前から担当して、20年間近く一人の作家をずっと担当という人もいましたからね。赤松さんはこれまで、この担当編集はすごい、といった人はいました?
赤松 新人のころはすごいなと感じましたけど、2〜3年経つと、あの人なら多分こう言うはず、というのが少し分かってくるじゃないですか。そうしたら、理論上は自分で直せるようになるはずですよね。
―― 逆に言えば、その2〜3年は必要ってことですよね。
赤松 そうです。マガジンの場合、配属された新人編集者は先輩編集者に付くんですよ。その先輩編集者が、作家に対してここ直してよ、ところでお前どう思う? って質問して、漫画家と編集者が一緒になってその若手編集者を育てていくんですよ。それでさえ何年か掛かるわけですし、新人漫画家を育てるにも何年もかかる。もうそんな暇はないです。今は即戦力の漫画家を持ってきて何とか売ってという状況ですから、育てている暇はないです。
両氏の考えは漫画界に対する危機感や現状認識という点では合致するところもあるものの、議論の多くは平行線をたどり、価値観の違いが明白なものになりつつある。4日連続でお届けしてきた両氏の対談も次回で終幕を迎える。果たしてこの議論はどのように収束するのか。明日の最終回にご期待いただきたい。
(eBook USER)
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